日本エコハウス大賞は、
意匠と性能の両面で優れた住宅を表彰する設計実例コンテストです。
第3回日本エコハウス大賞のテーマは、
「永く住み続けたくなるエコ住宅」でした。
日本エコハウス大賞 5つの評価項目
① 高い水準で躯体性能が確保されている。
② 周辺環境を読み込み、家族構成や生活性を考慮してプランされている。
③ 地域の気候や風土、習慣を尊重した設計がなされている。
④ エネルギーに対して経済性や持続可能性を考慮し、工夫・挑戦している。
⑤ 住まい手だけではなく、
地域、社会・未来に対して思いやりのある設計がなされている。
審査委員
〇 建築家 伊礼智氏
〇 建築家 堀部安嗣氏
〇 建築家 西方里見氏
〇 松尾設計室 代表取締役
パッシブハウスジャパン理事 松尾和也氏
〇 東京大学大学院 工学系研究科 建築学専攻 準教授・博士(工学)
前 真之氏
「新築部門」「リノベーション部門」「ロングライフ部門」の3つの部門があり、
今回、三友工務店は「リノベーション部門」で応募致しました。
毎年、当社はリフォーム・リノベーションの全国コンテストに応募し、
これまで数々の賞を頂いています。
しかし、今年は熊本地震の復旧工事を最優先し、
コンテストへの応募を控えました。
そんな中、唯一応募したコンテストが「日本エコハウス大賞」です。
2014年以降に改修した住宅が対象でしたので、
昨年、完成お引き渡ししましたI様邸を応募致しました。
設計は下田さんが担当し、現場は作村・草津ペアが担当致しました。
応募用プレゼンシートの1枚をお見せ致します。
「父の想いを住み継ぐ家」
設計ポイント:下田雅子 一級建築士
今は亡きご両親が住まわれていた築35年の空き家は、桜や藤などの樹々に囲まれ,大切に住まわれてきたであろうという空気に満ちていた。
長年、東京にお住まいだったにも関わらず、帰郷を決意された施主からの要望は、
・各所に父の思いが詰まった家なので、それらを残しつつ今風に住みやすく
・近所の人たちも気軽に立ち寄れるようなカフェスペースのある、老後も安心して暮らせる住まいを
・妹夫婦と同居する為に2階に増築、プライベートは確保しつつ、動きやすいシンプルな間取りに
というものだった。
施主の要望も満たしつつ,地域特有の南西からの風と敷地西側を走る水路を抜ける風を取り込むため、敷地南西角にあったガレージを撤去。「日当たりのよい南側に客間、メインの居住空間は北側に」という昔ながらの間取りを大胆に転換。既存の住まいの面影を残しつつ、南側の庭が目に入る光と風が心地よいエリアへLDKを、そこから北側の庭へつながるよう和室・縁側を配した。
また、既存建物は無断熱ではあったが構造的な狂いがほとんどなかったため、構造面での補強と気密・断熱を施し住宅性能の向上をはかった。その効果が、先の熊本地震の際も無傷であった。
施工談:作村貞勇 一級建築士
Iさんのお父さんが建てた自慢の家は、一枚板のドアにサクラの床板や桑の木の床柱など、
そこかしこに並々ならぬこだわりが感じられます。でも、間取りは35年前のまま。断熱材
も入ってなく、とても快適に暮らせる家ではありません。そこでスケルトンからの全面リフ
ォームとなったのですが、当時は立派だった家も開けてみれば構造的に弱い部分があり、ま
ずは構造の補強からのスタートです。お父さんのこだわった建具類も残らず再利用したか
ったので、丁寧に補修、研磨して再生させました。それを新しい家に使うのですが、平成の
最新設備と昭和の建具との折り合いをつけるのに、また一苦労。昔の基準で造られたドアや
柱は今よりも低いため、新しい建具と並べると落ち着きません。また、ピカピカの壁に褪せ
たフスマを入れるのも浮いてしまいます。新しいものと古いものとを見栄えよく共存させ
るには、さて、どうしたものか。設計と工務で随分と頭を悩ませました。でも、そういう時
こそ現場大工の腕の見せどころです。長年の経験と高い職人技で見事に新旧の融合を果た
し、現代風なのにどこか懐かしい、Iさんのお父さんの想いを今に受け継ぐ快適な住まいを
完成させました。ここまで来るのには本当に長い時間と技術を必要としましたが、それだけ
に見ごたえのあるリノベーションとなっています。
お客様の声
Q リフォームをしようと思ったいきさつを教えてください
A 元々は両親が暮らしていた築35年の平屋です。父の思い入れが詰まった家で、ドアは
全て一枚板、床の間は総サクラ材に床柱は桑の木。床材や天井なども母方の親戚が所有して
いた宮崎の山から切り出したものを使い、本当に父が時間とお金をかけて思い通りに建て
た自慢の家でした。
私はこの家で暮らしたことはなく、そういう話を聞かされても当時は何も思いませんでし
たが、父が他界して葬儀のために東京からこの家に戻った時、色んなところに父の思い出を
感じられ、自分は三姉妹の長女であり、これから父の代わりに自分がこの家を守っていきた
いと思うようになりました。父が他界したのは今から10年前。大阪にいる末の妹夫婦が子
ども達も独立したため一緒に熊本に帰りたいと言ってきたのが、一緒に住むきっかけにな
りました。
Q 三友工務店はどうやって知りましたか
A 設計を担当してくれた下田さんのお父様と私の義弟が知り合いで、義弟は下田さんの
お父様をとても信頼していました。リフォームをするに当たり、やはり頼むなら地元の信頼
できる工務店がいいと思っていたところ、義弟から知人の娘さんが三友工務店さんで設計
士をしていると教えてもらいました。また、私も東京で福祉施設の建設に何度か立ち会う機
会があり、その中で知り合った女性設計士さんは皆さん仕事がきめ細やかだったので、私も
出来たら女性設計士さんがいいと思っていたところに、下田さんという女性設計士さんの
紹介です。義弟がそんなに信頼する人の娘さんならきっと間違いないと思い、迷いなく三友
工務店さんにお願いすることにしました。私はいつも人と人との繋がり、ご縁を大事にした
いと思っているので、他の会社は全く当たっていません。
Q 今回のリフォームでこだわった点を教えてください
A 父の思いを受け継ぎ、守っていくことです。間取りは前の家の面影もない全面リフォー
ムですが、父がこだわって作った一枚板のドアはそのまま使えるように開口部を低く造っ
てもらい、和室には建具や欄間、床柱も再利用しています。家は現代風に住み良く、新しく
なりますが、父のこだわりは昔のままに残っています。これもリフォームだから出来たこと
だと思います。
また、妹夫婦との同居になりますので、お互いの存在を大事に出来るよう、共用部分とプラ
イベート空間をしっかり分けています。間取りや動線は暮らしやすくシンプルです。
実は最初は二階建てに増築したいと言ったのですが、年齢のこともあり、そこは下田さんの
言う通りにしました。その分、延床面積に入っていたカーポートと納戸を減築し、平屋のま
まで暮らせるように妹夫婦の部屋とカフェの一部を増築しています。
Q 新しい住まいにはカフェも併設されていますね
A はい。私も父が亡くなり、熊本に戻ろうと決めた頃から自分の生き方を色々と模索し、
第二の人生の目標として、せっかく地元に帰るのであれば地元に何か恩返しがしたいと思
うようになりました。私がずっと福祉関係の仕事をしていたこともあり、誰もが気軽に立ち
寄れ、そこでお年寄りから若い人、子育て世代のお母さん、子ども達が交流できる場所があ
ればいいなと思い、小さなカフェを開くことにしました。カフェであれば、お茶を飲むつい
でに気軽に集まれます。カフェにはピアノも置く予定です。小さいですが寛げる、地元の
方々の憩いの場になればと今から楽しみにしています。
Q 三友工務店のこれまでの対応はどうでしたか
A 私は三友工務店さんの皆さんを信頼していたので、何も心配することはありませんで
した。熊本と東京で離れていたため、打ち合わせはメールが中心でしたが、下田さんは週に
1回は現場の写真を送ってくれたし、口数は少ないのですが私の思いを私以上に良く分かっ
てくれていて、言わずとも心が分かるというか。全く心配はありませんでした。
家をリフォームするに当たり、サッシのことや床材のことなど、私も色々と勉強をさせても
らいました。ですから、このリフォームの金額も安くはないと覚悟はしていました。でも、
見積もりのお話しをする時に下田さんと作村さん、草津さんが揃って回りくどい言い方を
するというか、どうにも言いにくそうで、すごく気をつかってくれているのが分かりました。
大丈夫です、私もだいたい予測していましたと言った時、皆さんが、ああよかった、という
ようにホッとした顔をして、私も勉強をしていて本当にああよかった、と思いました。
また、現場にいた若い人に仕事は楽しいかと尋ねたところ、満面笑みで楽しいですと言って
くれたのが嬉しかったです。高校を出たばかりの今どきの若者が、仕事が楽しいと言える職
場。若者を育てることは、会社の将来に繋がります。そう思うと、若い人が楽しく働ける三
友工務店さんはいい会社だなと思いました。
Q いよいよ完成、地元での新生活のスタートですね
A コーヒー教室にも通ったし、美味しい豆も仕入れています。表千家の経験もあるので、
カフェではコーヒーもお茶も紅茶も出せます。ぜひ遊びに来てください。
ありがとうございました。
■施主の感想
見た目はもちろん、断熱材や構造の補強など見えないところまで対応していただいたお陰
で、先の熊本地震では周囲の住宅が多大な被害を受けた中、うちは被害ゼロ。ビクともしま
せんでした。父のこだわりの建具類も全て無傷です。地震を乗り越えた父の思いを今後も大
事に受け継ぎ、守っていきたいと思います。
ビフォーアフターです。
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カフェエリア
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